老親と自分の生前整理をする

正確にいうと実家ではないという事情

 

「実家の戸建て一軒家に一人で暮らしていた母が、軽費老人ホームに入所することになった。」
ということを、まえの記事で書いた。

しかし正確にいうと、実はうちには「実家」とういものは無いのだ。

 

「実家はないんです。」

 

というと、勘違いをする人がいて…

「そういういいかた良くないよ」
といわれたことがある。

おそらく、
「親子の関係を断つくらいに仲がよくない」という意味
で言ったと思ったのだろう。

いや、そういう意味じゃなくて…

説明しようとしたが、話題が切り替えられてしまった。

 

「実家」を辞書で調べてみると、

① 自分の生まれた家。生家。さとかた。
② 婚姻または養子縁組により他家へ入った者からみて,その実父母の家。

ということになっている。
そうすると、やはりうちの場合、どちらも当てはまる「実家」というものはないことになる。
そういう人多いんじゃないかと思うのだけれど。

 

私の場合、父親は転勤が多い種類の公務員でいわゆる転勤族だったのだ。
私たちの世代では父親が単身赴任するという観念が全くなく、転勤があるたびに我が家は引越しを繰り返して公宅(公務員住宅)を転々とした。

私が生まれたときも、すぐ転勤があって、私は生まれた家にはほんの数ヶ月しか住んでいない。
ということは、その家は当然記憶にもないし、おそらく既に存在しないだろう。
仮に存在したとしても誰が住んでいるかも知らない。
「実家」の意味が自分の生まれた家だとしても、それを実家とは言わないだろう。

 

私には上に兄が一人いて、兄は寮のある高校に進学した時に家を出たが、私は親元から通える高校に進学した。

その頃父は小樽に赴任していたので私の通っていたのも小樽の高校だった。
その高校1年の3学期、父親が他界してしまったのだ。

結局、父は自分の家を持つということもなく逝ってしまった。
それで母と私は公宅に居られなくなってしまったわけだが、父の同僚の方の好意でその方の空いている持ち家に住まわせてもらうことになった。

 

ところがその元同僚の方が私が高校3年のときに急逝。残された家族は私たちと同様、公宅出なければならなくなったので、住まわせてもらっていた家をあけ渡すことになった。たしか、私の大学入試の直前の12月のことだった。

 

私は進学先として札幌の大学1つに絞っていたので、色々都合がいいだろうということで母子2人で札幌市内の安い賃貸に引っ越すことになった。

無事札幌の大学に進学した私は大学4年間をそこで過ごし、大学を卒業して就職したのを機に独立して赴任先の地である小樽に越した。

 

その後一時期、母は空き家になっている親類の札幌の持家に留守番がわりに住まわせてもらっていたが、その親戚が持ち家に戻ってくることになった。

そんなとき母が、知り合いの不動産屋の紹介で売りに出ている小樽の中古物件を見つけてきて、支援するから私に家を買わないかという話になった。
その家が件の「実家」である。

 

頭金は母親が出したが残りは私が当時まだ存在した金融公庫と勤め先の共済から借りて買ったのである。
1992年のことである。

 

そんなわけで所有権の持分4分の3が私、4分の1が母親名義の共有名義になっている。
共有名義とはいえ、4分の3が私なのだから私の家といっていいんじゃなかと思う。
だから、実家ではなくて私の家なのである。

 

しばらく、母と私で暮らしていたが、それから、数年して私は結婚することになった。

家の作りがそのままでは2世代で暮らすには少し不便だったこともあったし、ちょうど妻と私の勤務先も少し離れたところにあったので、一時的にと思いながら私は家を出て、妻と賃貸に越した。

その後通勤に便利なところに手頃な価格の中古マンションをみつけて購入し、現在に至っている。

 

結果として、件の家は私の家なのだが私はわずかな期間しか住んでいなかったことになってしまった。
あのときどういう思いで購入を決めたのか今となっては思い出せない。購入しないという選択肢もあったはずだ。
なにしろ、バブル崩壊直後のことだ。不動産の価格も今と比べ物にならないくらい高かった。
この度売却を決めたが、その値段は悲しくなるくらいの値段であった。

 

母としては、ずっと借家暮らしをしてきて、いつかは自分の家に住みたいという思いがあったのではないかと思う。

結局、その家を出て老人ホームに移ることになったが、30年近く借家ではない自分の家で好きに暮らすことができたのは良かったのではないかと思う。

 

そんなわけで、これまでの間、母が一人で件の家で暮らしてきた。

 

正確に言えば、辞書的にも「婚姻または養子縁組により他家へ入った者からみて,その実父母の家」が実家なのだから、実家とは違うのかもしれないのだけれど、親がいる家という意味で実家と言えなくもないのではないかと思うので、件の家を「実家」と呼ぶことにしておく。

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